ビスケットモッチ
2023年4月8日
こいつはモッチ。
モッチの頭にある葉っぱがビスケットになったやつがいる。
そいつをビスケットモッチという。
そんなビスケットモッチがすぐに売れた。
店頭に置いたらすぐに売れた。
置いたらすぐというよりも、置かれる前からすでに売れていたのかもしれない。なぜならそれを購入したのは店の支配人だったからだ。
そう、彼はどんなお客さんよりもまず先にすべての商品にアクセスできる。特権階級なのだ。
その日は、ビスケットモッチ以外にもモッチのマイナーチェンジ版を計7品入荷していた。
たとえば、通常版の葉っぱの部分がキツネのお面になっていたり、全身が緑で上に赤い小さな花が咲いてるサボテンモッチと呼ばれるものだったりだ。
モッチ七人衆からビスケットモッチの姿がいなくなってから少したって、クリニックの人が店に訪れた。
その人は、モッチを買った。クリニックの会計するところに置くのだろうか。
他のクリニックの人も訪れたがモッチではないものを買っていったが、ざわざわとその日は繁盛であった。
そんな流れで最後にお客さんがきて、その方がいっきに残りの五人(モッチ、五モッチといったほうがいいのかもしれない)をまとめ買いしたのだ。
とんとん拍子に、転がるようにどんどんと商品が買われた。
私は、あっけにとられた。
あんな開店直後にずどんと鎮座していた七人衆のところにはいまは何もない。
四月は出会いと別れの季節で、この売れる速さは桜の散りゆくようで、そんな詩的なことを、別にまったく思ってもおらず、そのときは、ただ「ええ、すげー。え、えええ、すげええ、モッチ、モッチ全部売れてるうう。」と思った。